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東京高等裁判所 平成7年(行コ)99号 判決 1995年12月13日

控訴人(原告) 大久保晃 外一名

被控訴人(被告) 八王子税務署長

主文

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人らの昭和六三年分の贈与税について平成三年七月三〇日付けでした各更正処分及び各過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

との判決を求める。

二  被控訴人

主文と同旨の判決を求める。

第二事案の概要

事案の概要は、控訴人らの当審における主張を次のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」の記載のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人らの当審における主張)

財産評価通達は、その昭和三九年四月に発令されて以来、申告納税を行う納税者によって準拠されてきて、既に法的確信の域に達し法規性を取得しているものであり、また、平成二年八月に財産評価通達が改正されるまでは、株式の負担付贈与についても、一貫して財産評価通達一六九の定める評価方法によって評価したところに従って納税ないし課税がなされてきたものであるから、本件各課税処分は、法規性を有する財産評価通達及び信義則に反するものであって、違法である。

第三争点に対する当裁判所の判断

一  当裁判所も、本件各課税処分を違法ということはできず、したがって、控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないものと判断するが、その理由は、控訴人らの当審における主張に照らして、次のとおり付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」の記載のとおりであるから、これを引用する。

なお、控訴人らの当審における主張に照らして、付言すると、財産評価通達自体が法規性を有するものではないことは、先に説示したとおりであり、納税者は、これによらないで目的財産の正当な時価を主張することができることは、いうまでもない。また、これまで一般に、株式の負担付贈与については財産評価通達の定める評価方法によって評価したところに従って納税ないし課税がなされてきたことは、控訴人ら主張のとおりであるとしても、先に認定したところによれば、本件負担付贈与は、予め贈与時点における株式の時価と財産評価通達を適用して評価される株式の時価との間に一定の乖離がある株式を選定して、贈与者の資金及び借入金によって購入し、税額が零になるように計算した額の借入金債務の負担付で株式を受贈者に贈与することによって、贈与税の負担を回避して贈与者から受贈者に財産を移転することを目的としたものであることが明らかであって、これと株式の負担付贈与一般とを同一に論じることはできず、控訴人らの右のような形態による贈与税の負担の回避が容認されることになれば、租税負担公平の原則が損なわれることになるのであって、控訴人らの主張は、到底採用することができない。

二  そうすると、控訴人らの本訴請求を棄却した原判決は正当であって、本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担については行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条及び九三条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 町田顯 村上敬一 中村直文)

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